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Happy Unbirthday Songs

hokkaido→tokyo/tsukuba→moscow

現代美術館гараж(GARAGE)

9月14日(水)

 

 昨日は初めての授業。ものすごい速さで進み、8人ほどのグループで、皆、アジアからの留学生だった。今日は丸一日、授業が無い。部屋にいてもなんだか気持ちが閉じてしまうので、Nちゃんと一緒にпарк горыкого(ゴーリキー公園)内にある、現代アート美術館、гаражに行くことに。

 

この美術館のことはアエロフロートの機内誌で偶然知った。ホームページにアクセスしてみると、企画展はもちろん、現代アートに関するライブラリーもあり、常に何かしらのイベントやワークショップが開催されているというので、「モスクワにもこんなところがあったのね!」とずっと楽しみにしていたのだ。

 ゴーリキー公園は、レッドラインのпарк кулытуры駅で降り、モスクワ川の上の大橋を渡ったところにある。道路を挟んだ向かい側には、ロシアの近代美術作品を所蔵するトレチャコフ美術館の新館がある。歩いていると、頬にあたる風がもう冷たい。まだ9月だというのに。

 公園の中をうろうろしていると、ローラースケーターや自転車、そして卓球の貸し出し所があった。貸し出し所の外壁は、細長いカラフルな木の板が組み合わされており、落ち着いた、でもポップな雰囲気である。

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 コスモスが咲き乱れる花壇を横目に見ながら、小道を進んでいくと、これまたカントリー風のこじゃれたカフェを発見。テイクアウトもできるらしく、若い女の子二人が列に並んでいる。カフェの看板には「立って食べよう」とのメッセージ。カフェの周りを覗いていると、若い店員の男性が、荷台を押しながら話しかけてきた。

「日本から来たの、この公園すごく気に入ったよ」と言うと、「東京かい?東京もモスクワのように眠らない街なのかな?僕はここで生まれて、この街が好きなんだ。今度カフェにも来て、とってもおいしいから」と笑顔で話してくれた。こちらがつたないロシア語で話しても、ちゃんと待ってくれる。私が理解できなければ、違う単語で言い換えてくれる。ロシア語ができない自分にこのところ苛立ち、落ち込んでいたけれど、少年のように屈託のないこの男性と話して、すっかり元気になった。

 

 男性と別れ、гаражへ。全体はシルバーでシンプルな見た目に見えるけれど、宇宙と交信できそうな雰囲気も醸し出していて、モスクワの灰色の曇り空を背景に、一層存在感を増していた。

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中に入ると、眼鏡をかけた若い女性が、今は展示はやっていないけれど、書籍コーナーやカフェは利用できます、と笑顔で教えてくれる。

 この書籍コーナーがすごすぎた。美術館が季刊で出している雑誌、その名も『GARAGE』を立ち読みしたのだが、写真もモデルもレイアウトも、なんだかすべてがぶっとんでいた。充実した内容で、日本から持ってきたロシア語の文法書より分厚いのに、700円くらいとお手頃価格。書籍コーナーはロシアや国際的な近代アーティストの作品集や、超かわいいバッチ(ソ連の宇宙バッジが最高だった!)も売っていて、ボルテージマックス、テンションはうなぎ登りに。

 GARAGEはまたの機会にして、ロシア語の勉強も兼ねて子ども向けのアートブックを購入。そして帝政時代の最後、1910年代のロシアで撮られた写真をカラー化した写真集を立ち読みして、鳥肌が立った。そこに人が確かにいた、という事実が、カラーになることでずっしりと重みを持つような気がした。写真も珍しかった時代だろうし、皆、笑いもつくらず、カメラの方をまっすぐな目で見つめていた。声を持たなかった人々の声、歴史の表舞台などからは遥か遠くにいた人々の眼差しが、いちばん私の胸に迫ってくる。

 館内のカフェで私はクレームブリュレ、Nちゃんはピスタチオチーズケーキを。スタッフの人たちも本当に感じが良くて、良い場所には良い空気が流れているんだなと思った。展示が始まったら絶対来る。何度でも通いたい、本当に楽しみな場所ができた。

 

 夜は大学構内で開かれた、international student clubに顔を出す。100人くらいの留学生とロシア人が集まってきていた。一番多いのは中国からの留学生だけど、意外とドイツ人も多い。それでもいちばん熱心に話を聞いてくれたのは、ロシア人の参加者だった。形式的ではなくて、ちゃんとこちらに興味を持ってくれている態度なのだ。何人かと連絡先を交換した。それにしてもみんな背が高くて、首が痛い。

 

本当に刺激的な一日で、落ち着かせるのに時間がかかった。どんどん自分から外に出ていくという気持ちは忘れないようにしたい。

 

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