Happy Unbirthday Songs

hokkaido→tokyo/tsukuba→moscow

おもちゃのスマホと豚骨うどん

9月10日(土)

 

 11時に寮を出て、日本人留学生たちと共に、ウニヴェルシチエット駅近くのショッピングモール、アシャーンに向かう。家電量販店で、なんと1台500ルーブル(800円くらい)のロシア製スマートフォンを購入。手のひらサイズのおもちゃみたいな電話だが、電源をつけるとちゃんと動くし、画面にタッチして操作することができる。この家電量販店は別の場所へ移転するらしく、広い店内はがらんとしており、ラックにはドライヤー、珈琲メーカーのようなものが並べられ、割引セールが行われている。スマホの代金を支払おうとすると、レジのお姉ちゃんは、レシートの上に勢いよく受領のハンコを押し、不機嫌そうにこっちによこした。それでも特には気にならない。不機嫌そうだなーと思うだけである。

 

 その後、日本でいうところのauとかdocomoのような店に行き、SIMカードを300ルーブル(500円くらい)で手に入れる。これで毎月、2GBまで使えるようになるらしい。店員が赤いSIMカードの束をわたしたちに渡し、カードの右下に書いてあるから好きな電話番号を選べと言う。気に入った電話番号が書かれているカードを店員に渡すと、そのアレクセイという名の淡々とした感じのお兄さんは、パソコンに私のパソポート情報を打ち込み、電話が機能するかどうか確かめて、最後にSIMカードスマホの裏にセットしてくれた。ものの30分ほどで、しかも1000円にも満たない額で、ロシアでスマートフォンが使えるようになってしまった。日本の手続きよりもえらい簡素である。ロシアでは何かと手続きの際に電話番号が必要なので、これから役に立つだろう。大きな前進、うれしくなる。

 

 お昼は、同じショッピングモールの中にある丸亀製麺(!)へ。店内は明るい雰囲気でカフェのようにも見えるが、厨房からもくもくと湯気が上がっていることから、うどん屋だとわかる。店に入った途端、「ズドラーストブゥイチェ!」と何人もの店員が威勢の良い声で迎えてくれる。私が豚骨うどんを頼むと、中央アジアの出身だろうか、優しそうな表情の男性店員が、「と・ん・こ・つ・う・どん!!」と復唱し、笑顔でうどんを手渡してくれた。日本のようにかき揚げや天ぷらも充実しているし、鰻とサーモンの寿司ロールのようなオリジナルメニューもある。店員は全員がアジア系の顔立ち、客も中国人が目立つが、肌の白いロシア人客もちらほらいる。あるロシア人男性客は、おいおい大丈夫かと言うくらい、キッコーマンの醤油をうどんにドバドバとかけていた。

 

 店内にはカードキャプターさくらセーラームーンのテーマ曲などがかかっている。なんとも微妙な選曲だなあと思いつつうどんをすすったが、うどんそのものは、つるんとした食感でとてもおいしい。豚骨うどんは、豚骨ラーメンの麺がそのままうどんに変わったという感じの味。洋風の味に疲れたら、たまにはここにくるのも良いかもしれない。豚骨うどん、250ルーブル(約370円)也。

 うどんを食べながら、留学生の一人のモンくん(仮名)が、モスクワの地下鉄の裏話を始めた。彼はロシア語学科の学生で、すでにロシアに半年ほどいるため、ロシア語が堪能だ。先ほどのスマホの手続きは、モンくんなしには不可能で、何から何までロシアで生活する上で必要な情報を提供してくれる。

 モンくん曰く、私たちの最寄りのウニヴェルシチエット駅がある赤いライン(赤線という)が、モスクワで最初に出来たメトロの路線だった。そのときはウニヴェルシチエット駅が終点だったが、現在は延長されている。地下鉄のホームは、クレムリンに近い主要な駅ほど、地上から深いところに電車がある。これはシェルターの役割を果たしているらしい。

そして興味深いことに、モスクワには市民が使えない路線が存在していて、クレムリンの関係者のみが使用できるという。もはや都市伝説である。本当にそんな路線があるのか、自分でわざわざ線路の中を歩いて撮影、youtubeに投稿し、警察につかまった人もいるとか。Youtubeでロシアのメトロについて検索するとおもしろいよ、とモンくんは笑った。

 

 その後、昨日に引き続きアシャーンで買い物。レジでの支払い時、わたしが40コペイカ足らなかったのだが、510ルーブルだけでいいわよ、とおばちゃんは許してくれた。ロシアのスーパーでは閉店後、精算なんてするのだろうか。いや絶対していないと思う。

 

 部屋に戻りロシア語の勉強。夕方に洗濯機があるフロアに行き、たまっていた衣類を洗濯にかける。私は友達と二人で使って、一人50ルーブル。洗濯機の表示が実際の機能とずれていて、なぜかcolorというボタンを押すと冷たい水が出ることになっている。洗濯物の待合所では、ただ銃をバンバン打ち合うだけの、特に深みのなさそうな刑事ドラマが延々と流れている。

 

 カフェでカルボナーラボルシチ。どちらもおいしくてお腹いっぱい、これで460ルーブル(約650円)。今日は昨日のポンコツ姉ちゃんではなく、感じのいいひげ面の兄ちゃんが接客してくれた。彼の右手の薬指にきらりと光る指輪を見て、そういえばこっちの人は結婚指輪を右手にするのだなということに気が付く。

 夜9時半に再び外に出て、花火(サリュート)が打ちあがるというので雀が丘(バラビョールィ・ゴールィ)まで観に行く。たくさんのカップル、若者たち、家族連れが、楽しそうに集まってくる。花火はたった10分ほどで終わり、日本から来た私から見ればこじんまりしたものだったが、「ウラー!」という歓声がいたるところから湧いていた。

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 雀が丘からはモスクワの夜景が見渡せる。スキージャンプ台、モスクワ川、警視庁、ホワイトハウスソ連末期の保守派の拠点)、ウクライナホテル(ゴルバチョフ側の拠点)、モスクワシティと呼ばれる高層ビル群など。ホワイトハウスウクライナホテルは互いに敵の陣営だったのに、ものすごく近い距離にあることに驚く。東京の夜景に慣れているせいだろうか、まばゆいばかりの夜景、というのとは違った。東京の光を見ると、ああ、今夜もあそこで働いている人がいるのだなという気になるのだけれど、モスクワはどちらかといえば街灯の光がメインなので、もうすこし落ち着いた雰囲気なのである。

 今日も疲れ切って23時半に就寝。