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Happy Unbirthday Songs

hokkaido→tokyo/tsukuba→moscow

書類、書類・・・

9月8日(木)

 朝、10時にサーシャが迎えに来る。Nちゃんとともに、学生証を発行してもらう部屋に連れていってもらう。部屋の中で、激しいテンポの曲をガンガンかけているおばちゃんが座っていた。顔色一つ変えないおばちゃんの言われるままに書類を記入する。日本からもってきた写真は、しっかりツヤなし加工をしてもらったはずなのに、写真の上に押すハンコがにじんでしまうから駄目だと言われる。さっそく、大学の中にある写真屋でパチリ。ものの3分で一丁上がりだった。

 

 その後、文学部に行って手続きをしようとするも、まずはアジア・アフリカセンターで書類を取りに行かなければだめだと言われる。このセンターは大学からは離れた、モスクワの中心地にある。行き方がわからないでいると、サーシャはもともと入っていた予定を延期して、私たちのためにセンターまでメトロで同行してくれることになった。本当にありがたい

 

 モスクワの地下鉄の入り口は、どこか豪華な宮殿のような形をしている。私はカッサ(切符売り場)でトロイカというICカードを買う。200ルーブルで、50ルーブルはカード代。カードを返却するときに50ルーブルも返却してもらえるらしい。カッサのおばちゃんの笑顔がすてきだった。

 改札をくぐり、ものすごい速さで進んでいくエスカレーターに飛び乗る。エスカレーターの間にはクラシカルなランプ。モスクワでは皆、右側に立っているから、これは日本で言えば大阪方式だ。長い長いエスカレーターを降りて駅のホームに着くと、金属のこすれる音だろうか、けたたましい轟音と共に電車が到着した。急いで飛び乗ると、すぐにバン!とドアが閉まる。あれに挟まれたら、確実に死ぬな...と覚悟した。ロシアでは地下鉄で居眠りする人をほとんど見たことがない、とマリアさんは言っていたけれど、こんな緊張感のある空間で居眠りすることなんて、ぜったいに出来ないだろう。

 

 20分ほど乗って、アホートニー・リャアト駅に着く。天気は快晴、日差しはすこし肌に刺さるほどだ。外に出ると赤の広場がすぐそこに見えた。ここはモスクワの中心地なのだ。

 アジア・アフリカセンターは駅からすぐの場所で、事務室に行くと、機敏に動く女性がいた。いわゆる白系ロシア人ではなくて、中央アジアあたりの出身なのだろうか、黒い髪と意志のある目が印象的だった。彼女はすぐ私たちに気づき、さっそく登録の手続きを始めてくれた。ウミダさんという名前で、これから必要な手続きについて、英語を使いながら熱心に説明してくれる。それでも、「あなたたちはがんばってロシア語を勉強するからね」と言って、ちゃんと私たちにもわかるよう、ゆっくりはっきり、ロシア語も話してくれる。私がそれに応えてつたないロシア語で話そうとすると、私の調子に合わせて言葉を補ってくれる。この心づかいが嬉しかった。

「今週の土日はモスクワ誕生のお祭りがあって、ものすごいたくさんの人が集まるの。このタイミングで来れるなんて、あななたちラッキーよ。パレードや花火もあるから、来てみたらいいわよ」と教えてくれる。ウミダさんの同僚のおばさんも、最後に笑顔で板チョコレートを渡してくれた。

 サーシャは用事があるので別れて、私たちは学生食堂に行く。そばの実を炒めたもの、鳥の丸焼き、サラダ。これで4~500円。鶏肉の塩味が絶妙で、大満足だった。

 

 せっかく天気がいいので、赤の広場へ。いままでガイドブックやテレビで見たのよりもはるかに、迫力があって色彩が美しい。赤の広場へ入る門の間には、正教徒の人びとが祈る小さな空間がある。中からはお祈りの歌。門のところには、ひたすら十字を切り続けるおばあさんが、通り過ぎる観光客たちに寄付を募っていた。

 

 赤の広場といっても、だだっぴろい空間が広がっているわけではなく、ここでは常にイベントが開催されているらしい。私が行ったときにも、「international military musical festival」のための仮設スタジアムが出来ていた。いったいどんなことをする祭りなのかわからなかったが、日本の国旗も掲げられていたのはどういうことなんだろう。道の途中で、金日成金正日のバッジを付けた男性とすれ違い、すこし驚く。日本で北朝鮮の人に会ったことはない。

 

 玉ねぎ坊主の頭で有名な、聖ワシリー寺院に入る。ホイップクリームのような屋根で、そのクリームの先端に十字架が刺さっているように見える。ホイップクリームも白色と言うわけではなくて、水色と白、緑と赤、金色、黄色と緑、というように、なかなか奇抜な、毒性の強そうなクリームだ。外壁は基本的に茶色だけれど、まるでお菓子の家のようなポップさがある。

 100ルーブル払って寺院の中へ。様々なイコン、17世紀ごろの家具、コイン、アクセサリーなどが展示されている。イコンによって描かれ方は全然違う。ちょっと間の抜けたような表情もあり、かわいらしい。男声4人のアンサンブルにも耳を傾ける。屋根がとても高いので、響きがどんどん広がっていくようだった。

 

 再び地下鉄に乗り、大学に戻る。ウミダさんに渡された書類を、再び文学部の事務室へ提出しに行く。私がドアの前で入るのを少しためらっていると、若い女性が「入って!」と声をかけてくれる。眼鏡をかけた、とても優しそうな雰囲気をまとっているおばさんが、「大丈夫、すべてわかっているわよ」というように、書類を受け取ってくれ、ロシア語試験の日程を教えてくれる。ひとまず一安心。

 

 書類の手続きをしているうちに、あっという間に夕方になった。学生食堂で、東京外大から来た学生と共に夕食。野菜スープがおいしい。ロシア料理は、きっと飽きることが無いだろうなと思う。20時過ぎにインターネットの契約手続きを済ませる。22時過ぎには倒れこむように寝てしまった。