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Happy Unbirthday Songs

hokkaido→tokyo/tsukuba→moscow

the eyes, the ears,

the eyes, the ears,  (写真・文:川内倫子 発行: FOIL 初版:2005年)

 

 

ただ生活しているだけで、目には無数の情報が飛び込んでくる。けれど、忙しさや胸に去来するさまざまな感情に流されて、どれだけ目の前の「いま」を見ているのだろうかと、自問したくなるときがある。

 

見ることへの欲求。川内倫子はカメラという目を通して、肉眼では見えないものを捉えようとする。見えないけれど、その気配を確かに感じることができるもの。のっぺらぼうをした日常に、ある瞬間、ぱっくり裂け目ができる。穴の向こうを覗いたとき、一体どんな世界が広がっているのだろうか。

わたしもその景色を見たいのだけれど、ページをめくる指は少し恐る恐るしている。自分が信じていた「現実」が、軽くフッ飛ばされそうな予感がするから。

 

写っているものは、言ってしまえば、ただの花、ただの肉片、ただのパイプ管、ただの人々。でもそのなんでもない風景の中にある、ひとつひとつの存在感を、川内は逃さなずに封じ込める。

 

 澄ませ       listen.

 覚ませ       wake up.

    目を耳を      the eyes, the ears,

    指先まで   to the fingertips

 全身で    and with the whole body. 

                              (本文より)

 

日常に潜む危うさとなまめかしさに、時折足をすくわれそうになりながら、水の、空の、闇の、それぞれの余白に、私たちは溶け合ってゆく。